2017年8月13日日曜日

もっと、交換反応 : NaOMe最強伝説

お相撲さんの街、両国でお蕎麦を食べたときのメモです↓

-そば酒膳 業平屋 memo-

-自家製そばみそ (120 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
老舗のそれと較べて幾分流動性があり、キメ細かい舌触り。モダンで硬めのtasteに「洋」的ニュアンスを感じる。powdery感もあるか?そばの実が多く入っていて、カラッとサクッとした食感ではなく、少ししっとりしている。あと、胡麻も入っている。

-日高見 純米辛口 燗 (一合) (700 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
人肌でいただく。淡麗辛口系も、穏やかだけどしっかりと好ましい甘味•酸味•果実味が湧き出てくる。とても旨い。
平杯で吞む燗酒は、香り立ちが良く旨さの奥行きが広がる。


-冷製トマトそば (1,260 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
ズバリ、ぶっかけのとまとそば。フルーツトマト、バジル、オリーブオイル、松の実、etc.を添えたお蕎麦(デザート付)。約25-30年前に生まれた名物で、マリネしたフルーツトマトのうま味と、そばの風味が絶妙にマッチという触れ込みの一品。細切りの二八そばはのどごし重視という。信州産そば粉を、店主が毎月箱根で汲んでくる名水「子母の水」で打つそうです。
蕎麦は極細。一本芯の通ったアルデンテで粉っぽさはない。コシが強く、正にのどごし重視。つゆは、まずバジルの香りが一閃。油(オリーブオイル)が浮いている。一口啜ると、バジルとオリーブオイルのtasteが強いが、そばつゆらしい醤油tasteとかつお節ライクな節系な和的tasteをしっかり感じる。
具材で最も特筆すべきは、やっぱりメインのトマト。皮の剥かれたトマトは柔らかく、とってもfreshでとってもjuicyで柔らかい酸味が気持ちいい。
蕎麦の香味は他の食材•味付けで掻き消され、ボクには感じ取れなかったけど、とっても旨い(ちなみに、ボクはのどごし重視派だ)。極細のキリッと角の立ったのどごし重視の蕎麦が、バジルとオリーブオイルを良く絡める。バスタ(ジェノパーゼ)とは違う独特の心地よい食感。トマトと一緒に食べたり、トマトを崩して周囲のつゆと共に啜ったりするのも味が膨らんで良い。あと、松の実が良いアクセントになっている。
所謂和的そばつゆtasteは表立って自己主張してはいないけど、ベースにはしっかり食い込んでいて、和と様の融合蕎麦がハイレベルで具現化している。
とってもcreativeかつinnovativeなニューウェーブ系蕎麦と思いました。これが25年位以上前にあったなんて凄い!


閑話休題


もう随分前になるけど、エステル交換反応についてメモしました↓
http://researcher-station.blogspot.jp/2013/10/zntac24-environmentally-friendly-and.html

これはZn4(OCOCF3)6O (ZnTAC24TM)というMOF (Metal Organic Framework)を使った触媒反応で、九州大の大嶋先生のグループの報告でした。

で、今回のメモも大嶋先生のグループの報告で、エステル-アミド交換反応のメモです↓

Sodium methoxide : a simple but highly efficient catalyst for the direct amidation of esters
Chem. Commun., 2012, 48, 5434-5436.

23 examples,  70-99% yield  (time = 20-70 hr)

触媒量のNaOMeでエステル-アミド交換反応をするっていう、「とっくの昔に報告済みなんじゃないの?」といった印象のお話です。触媒量のNaOMeを使ったエステル交換反応はよくやられてると思うんですが、エステル-アミド交換も同じように広く使われてるんじゃないのと思っていたんですが、"触媒量のNaOMeで"っていうのはこれまで報告がなかったらしいです(化学量論量のNaOMeやKOtBuを使ったエステルのアミド化は既報がある。ref. JACS, 1960, 82, 665.; JOC, 1963, 28, 2915.; Tetrahedron Lett., 1999, 40, 6177.; Tetrahedron, 2003, 59, 2185.)。

著者らは触媒のスクリーニングをしていて、ナトリウムアルコキシドとカリウムアルコキシドが高い触媒活性を示す一方で、リチウムアルコキシドやカルシウムアルコキシドは低活性でした(ベストプラクティスはNaOMe, see SI)。

エステル側はメチルエステルがベストで、イソプロピルエステルでは収率が大幅に減少し、tert-ブチルエステルだとtrace量しか目的物が得られません。電子不足なエステルは良い基質で、電子リッチなエステルでは反応の進行が遅いです(この辺りは順等ですかね)。また、エステル側のエステルユニットでない方の置換基の立体障害に幾分弱いようです。

アミン側はアニリン以外の種々のアミンにおいて高収率で、アミノエタノールを用いた場合、アミノエステルよりもヒドロキシアミドが優勢となります。

あと、当たり前って言えば当たり前なんだけど、系内に水の存在にり触媒活性が阻害されます(水酸化ナトリウムになっちゃうからね)。なので、MS 3AやDrieriteのような乾燥剤を加えて反応を行うことでNaOMeの添加量を1 mol%まで低減させることが出来ます。

そして、(メチル)エステルとアミンの両方が液体であればsolvent-freeで反応を行うこともできます(E-factor 0.35)。


ところでこの反応は、アミドやカルバメート (N-Boc)には不活性です。なので、著者らはキラルな基質を用いたペプチドカップリングにもトライします。で、ペプチドカップリングの前段階として、まず光学活性アミノエステルのアミド化を検討しています↓

Bocとメチルエステルで保護したフェニルアラニン(Boc-Phe-OMe)とベンジルアミンとの反応(5 mol% of NaOMe)では、収率は良いものの、力強くラセミ化してしまいます(96%, 2%ee)。そこで、著者らは酸性度の高いアルコールを系内に加えることで、ラセミ化の抑制をはかります。結果、その目論みは奏功し、収率とeeがadditiveとして添加したアルコールのpKaと良く相関しています。それで、この結果を基に設定した反応条件がこちら(NaOMeを10 mol%, addiveに30 mol%の4-trifluorophenolを使用している)↓


かなりいい感じのラセミ化が抑えられています♥️

本命のキラルなN-Bocアミノエステルを用いたペプチドカップリングの結果はこちら(Boc-Phe-OMeとH-Gly-OtBu、H-Ala-OtBuとのペプチドカップリングを試しています)↓
特にH-Ala-OtBuの反応性が低く、高めの反応温度と長めの反応時間が必要です(一応、原料回収できて、ボクの嫌いなbrsm (nased on recoverd starting materials)で87% yieldです)。

著者らは本報のNaOMeを用いたエステル-アミド交換反応を、"simple, highly efficient, nontoxic, catalytic, environmentally benign"とアピールしています。確かに、シンプルな基質を用いた反応なら、パワフルで簡便でエコフレンドリーと言えるかもしれませんが、モレキュラスーブスを使用すると、ちょっとおいしさが半減するし、エピメリ化抑制の為に加えてる4-trifluorophenolの入手性が気になります(TCIやAldrichでヒットしない)。それでも、数mol%のNaOMeでガッツリ交換反応が進行するっていうのは魅力的だと思うし、酸性度の高いアルコールの添加でラセミ化が抑制できるって いうのが面白いなって思いました。

因に、他のエステル-アミド交換反応の例として本報のイントロ部分で挙げられている方法には、Sb(OEt)3 (JACS, 1996, 118, 1569.; Bull. Chem. Soc. Jpn., 1998, 71, 1221.)、Zr(OtBu)4-HOAt (JACS, 2005, 127, 10039.)、NHC (OL, 2005, 7, 2453.)、DBU (OL, 2009, 11, 2003.)、triazabicyclo[4.4.0]dec-5-ene (Tetrahedron Lett., 2007, 48, 3863.)、1,2,4-triazole-DBU (OL, 2009, 11, 1499.)、Ru触媒を用いたエステルのアミノリシス (JACS, 2011, 133, 1682.)があるそうですが、基質一般性に改善の余地があり、キラルなα-アミノ酸の触媒的なペプチドカップリングの例はないとのことです。

総合的に判断すると、
やっぱ

NaOMeが最強

なのかなとボクは思います(安いし)。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)の交換反応メモでした。



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